ドンッ
空が茜色から黒へと変わった頃、べランダから鈍い音がした。
音がしたね。
何かぶつかったのかな?
E後さんが音のした方へ行ったんだ。
あーっ、大変です!
鳥が倒れてます!!
エーッ!
小鳥が一羽、あたかも人形ののように転がっていた。
生きているのか死んでいるのかわからない。
い、生きてる?
大丈夫です。
少し動いています。
ほんの僅かな動きがそれが人形でないことを証明していた。
よかった、生きてる~。
こういうとき、どうしたらいいんだろ?
獣医さんとこか?
T君、どうしたらいいかググッて!
座右の銘は 後回し と言っているE後さんだがこういう時は素早い。
後輩のT君に向かって叫んだ様は頼もしさを感じるところでもある。
鳥 窓 激突
検索
カタカタカタ
出ました。
脳しんとう起こしてるみたいです。
怪我をしていなければ
1時間くらいで目を覚ますようです。
暖めてあげると良いみたいです。
よかった-。
暖めるってどうする?
新聞紙?
タオル?
嘘や誤解、悪意もある。
そんなネットという大海から正しい情報を選ぶのは難しいことだ。
釣った魚が食べられるものか、はたまた毒があるのか食べてみないとわからない。
そんなバカげたことってあるだろうか?
しかし今の自には食べざるという選択肢しかない。
大海原を航海している自分の船は
小型船なのか、大型船なのか、はたまた泥船なのか、そんなどうでもいいことを考えていると
お前の船なんて知ったこっちゃない
と言わんばかりに小鳥は起き上がった。
羽を小刻みに震わせ、自身の身体が思うように動くか稼動領域を確認しているように見えた。
なぜ自分は小鳥を心配するのだろう?
生き物が好きだから?
ベランダで死なれたら気分が悪いから?
健気に動く鳥を応援したくなった?
どれも正解だし、不正解でもある。
人間だったら全速力でぶつかった後
脳震盪でこんなにすぐ起き上がれるものか?
死んでしまうんじゃないだろうか?
と思ってしまう自分に軽い嫌気がさしたが
小鳥が無事に飛び立つ姿をみて
わずかな安堵感を覚えたことで思わずフッと笑ってしまった。
これはこれでいいんだろう。
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